ユニクロが、3月から国内勤務正社員を対象に年収が最大40%アップするというニュースは衝撃的でしたね。
これで社員の年収が、国際水準になると言っていました。
しかし、賃上げ前でも国内アパレルチェーンの賃金水準を上回っていましたファーストリテイリング。
それが、さらに40%~15%もアップすれば賃金格差が開きます。
人材がファーストリテイリングに転職してしまうとアパレル業界は大騒ぎになっています。
ユニクロの平均年収
ユニクロを運営をしているファーストリテイリングの平均年収は「959万円」と言われれいます。
また、ユニクロの平均年収は、「410万円」と言われています。
果たしてどっちを基準にすればいいのでしょうか。
ファーストリテイリング社員の平均年収は959万4000円(22年8月期、以下同)というネット記事がありました。
しかし、これは持ち株会社ファーストリテイリングの従業員1698人に限ったものです。
ユニクロの2万人前後と見られる国内勤務正社員の平均でも、
全世界フルタイマー従業員5万7576人の平均でもありません。
経営幹部と管理職などの平均給料に限られるから相当に高額になるのも当然です。
しかし、店舗や物流施設まで含めた国内従業員の平均年収はユニクロの410万円。
計算上では、国内ユニクロの一人当たり売上2961万5000円と連結決算から推定されるは人件費率16.3%。
一人当たり人件費は482万7000円となります。
会社が負担する法定福利費や交通費、退職金引き当てなどを差し引いた給与支給額を85%と仮定すれば
平均給与は410万3000円という計算になります。
仮に、これが最低の15%アップになれば、471万8500円になります。
会社の負担増は198億円ほどで営業利益を5.7%ほど下押しするに過ぎません。
実際にユニクロで働く店舗スタッフの平均年収は320万円とも言われる調査もあります。
一方で、営業スタッフや商品マーケティングスタッフなどはもっと少し高く500万円~800万円。
つまり、ユニクロでも本社スタッフでなければ給料はそれほど高くないことになります。
アパレル業界の平均年収
アパレル業界の平均年収と比べてどうでしょうか。
しまむら、ユナイテッドアローズ、アダストリアなどと比べてみましょう。
給与水準を転職情報等で確認できる国内の大手アパレルチェーンで最も高額なのは、どこでしょうか。
- しまむら480万円
- ユナイテッドアローズ358万円
- アダストリア396万円
- ベイクルーズ404万円
- ライトオン433万円
- ハニーズ313万円
- コックス353万円
比較してみると、ファーストリテイリングの給与水準は国内アパレル業界では高い平均年収とも言えます。
しかし、これは本社スタッフに限ったこと。
人手不足に苦しむアパレル業界がファーストリテイリングの賃金アップで大騒ぎするのも当然です。
しっかり店舗研修をして、アパレルのノウハウを身につけた優秀な経験者はユニクロに転職することで年収の大幅アップが期待できます。
ユナイテッドアローズやアダストリアのマネージャーや商品部スタッフは、ユニクロに転職するほうが給料は大幅アップが期待できてしまいます。
ユニクロの給料と人事制度
ファーストリテイリングの今回報酬テーブル改定の対象となるのは8400名ほどのようです。
約2万人に上る(ユニクロだけで1万2698人)国内勤務正社員の4割強にしか過ぎません。
役職手当を廃して成果報酬制になる対象者は、全国転勤OKの「キャリア組」。
実際の従業員数は、地域社員で安定志向の「ノンキャリア組」の方が圧倒的に多くなります。
成果報酬制のキャリア社員は15%アップする見られます。
しかし、ノンキャリア社員の地域社員はどうなんでしょうか。
15年にユニクロが開示した21等級の報酬テーブルの下から4階級目のJ-4と5階級目のJ-5の中間に相当するのが平均年収くらいになります。
この報酬テーブルは下は320万円から上は3億9000万円まで122倍もの格差が公表当時も物議を醸しました。
幹部の集まる持ち株会社ファーストリテイリングの平均年収959万4000円が15%アップして1103万3000円。
成果報酬制では上級ほど累進するから20%以上のアップになるのかも知れません。
国際基準と比較して

ファーストリテイリングの平均年収は国際基準と比較するとどうなんでしょうか。
H&MやZARAと比べるとどうか?
グローバル展開するライバル企業たるH&M、INDITEX(ZARA主体)と比べてみよう。
H&M(21年11月期、SEKの平均為替レートは12.8円)の売上は19,896,700万SEK(2兆5470億円)
従業員数は107,375人(フルタイム換算と推計)だから、一人当たり売上は1,853,010SEK(2371万8500円)になります。
人件費3,779,100万SEKは売上の19.0%で、一人当たりは351,953SEK(450万5000円)。
給与総額は3,040,700万SEKだから、一人当たり給与は283,185SEK(362万5000円)になります。
人件費に対する給与比率が80.5%と低いのは社会保障費が高いからです。
INDITEX(22年1月期、€の平均為替レートは130.38円)の売上は2,771,600万€(3兆6140億円)。
従業員数は165,042人だが内正規雇用81%/期間雇用19%、フルタイム44%/パートタイム56%と開示されています。
フルタイム換算人数ではなく、一人当たり売上は16万7933€(2189万5000円)とH&Mやユニクロより単価が高いにしては低過ぎます。
店舗従業員113,624人の一人当たり売上は24万3927€(3180万3000円)と単価水準に見合います。
人件費率15.1%から一人当たり人件費は36,833€(480万2000円)、直接給与比率83.7%から一人当たり給与は30,829€(401万9500円)と推計できる。
ユニクロの新賃金水準471万8500円はグローバルチェーンの首位、INDITEXを17.4%、次位のH&Mを30.2%も上回ります。
給料が高いのは役員だけ
ファーストリテイリングの社内取締役4人の報酬総額は8億1400万円と開示されています。
柳井会長兼社長の4億円(ほかに配当収入136億6500万円)を差し引けば一人当たりは1億3800万円になります。
社外取締役4人の報酬総額7000万円も合算して平均すれば6914万円余。
H&MのCEO報酬は固定給と成果報酬を合わせて2130万SEK(2億7264万円)と意外と薄給ですが、
別に430万SEK(5504万円)が年金に引き当てられます(09年退任の前任CEOの年金負債は1億2560万SEK/16億円強)。
CEO以外の取締役7人と執行役6人、計13人の報酬は固定給と成果報酬を合わせて6860万SEK(8億7810万円)。
だから、一人当たりは527.7万SEK(6754.5万円)になります。
INDITEXの役員報酬は会長の12,443,000€(16億2232万円)が突出していて、他の内部5名、外部6名の取締役報酬の合計は8,789,000€(11億4591万円)。
一人当たりは799,000€(1億0417万円)になる。
ファーストリテイリングの柳井会長兼社長を除いた取締役の平均報酬はINDITEXの会長を除いた取締役の平均報酬には劣りますが、H&MのCEOを除いた取締役の平均報酬と大差なく、グローバル水準といえます。
まとめ
いかかでしょうか。
ユニクロの給料が高いと言っても、主に本社スタッフです。
アパレル業界では、本社スタッフにキャリアアップしないと高給取りにはなれない。
ユニクロは試験制度で昇格できます。
常に、勉強してスキルアップをしなければ給料は上がらないということになります。